『キノの旅』第1話「人を殺すことができる国」〜アニメから読解力を鍛える〜
こんにちは。
アニメ好きの国語科塾講師です。
最近、子供たちの読解力の低下が嘆かれています。実際に授業を担当しても、子供たちが文章の内容を正しく読むことができていないと感じることはよくあります。
「文章を正しく読めていない」=「文章全体の構造の把握ができていない」ということだと思われます。
読解力というのは、子供でも大人でも等しく必要な能力。物事を考え、発信するための基盤になります。
ただ、堅苦しい文章をいきなり読んでも頭がパニックになって、余計に文章に触れることが嫌いになりかねません。
そこで、比較的入り込みやすい「アニメ」を使ってはどうかという結論に達しました。映像もあるので、のめり込みやすい。楽しみながら勉強もできるのではないかと考えました。何と、既にそういった取り組みがブログでもされていたのです!
アニメで学ぶ物語文の読解力向上講座の連載、始めます。(プロローグ 1 of 2)|c_mamasapo|note
アニメと文章読解は本当に繋げて大丈夫なのかと思いましたが、この記事を見て私も書こうと決断しました。
今回は、『キノの旅』というアニメを題材に取り上げようと思います。
『キノの旅』とはどんなアニメ?
(出典:公式ホームページより)
旅人のキノが相棒でモトラド(モトラート・ドイツ語で二輪車の意味)のエルメスと旅をしながら、様々な国を巡るという短編、1話完結型のファンタジーである。キノとエルメス以外にも、「師匠と相棒」「シズと陸」「フォトとソウ」が主人公となる話があり、他にもこの4者以外が主人公の話も稀にある(具体的なことは#各話一覧や下記参照)。基本的にはキノら旅人が、毎話、独特の制度や技術、価値観を持つ国家や国民と関わるというストーリーで、そこに寓話の要素を持つ。本作はライトノベルにおける「寓話的異世界物語のさきがけ」という評価もある。
作者は、松本零士の『銀河鉄道999』がこの作品の根源にあると語っている]。また、時雨沢曰く、「読者層は小学生から高校生辺りが主であるため、難しい表現はなるべく避けている」という。(Wikipediaから)
原作がライトノベルです。上記にあるように、難しい言葉があまり使われておらず、内容の吟味に専念できるのではないかと思います!
第1話「人を殺すことができる国」について
U-NEXTや、dアニメストアで配信されています。
※グロテスクなシーンも含まれている話になるので、視聴の際は気をつけてください。
視聴をされたあとに、以下の質問に答えていってください!
Q1.「人を殺すことができる国」とはどういうことか?道端で出会った男のセリフを基に。
→(例)法律で殺人が禁止されていない国。
Q2.なぜ男はその国に憧れているのか?
→(例)男が育った場所は、治安が良すぎて、喧嘩さえまともに出来なかったから。
Q3.男はその国で何をしようとしている?
→(例)とりあえず住んでみて、気に入らない人がいれば自分らしくいられるために、その人を殺す。
Q4.キノはその男のセリフを聞いて、どんな国だと想像したか?
→(例)治安が悪く、荒くれものの集団が集まっている国。
Q5.実際に入国してみて、キノはどんな印象を受けた?
→(例)治安が良く、旅人にも優しい国。
Q6.キノのような「人を殺すことができる人」がこの国に住むのに向いていると男の老人が言ったのはなぜ?
→(例)殺人者、もしくは未遂者をキノが容赦なく殺すことができ、この国の平和の存続に協力してくれそうだと老人が判断したから。
Q7.結局、「人を殺すことができる国」の実態とは?
→(例)犯罪者が好き放題殺人を行っているのではなく、国の平和を脅かすような殺人(未遂)があったときに、その人を殺すことができるという国。
★この話の全体構造
「人を殺すことができる国」
●一般的な解釈
「自分が気に食わないものが居たら容赦なく殺して、自分にとって都合の良くなるような状況になるように殺人を繰り返している国」
=殺人が禁止されておらず、許されている国
↕
●実際
「国民および国の平和の安全が脅かされるような殺人者が現れたときに、平和を守るために殺すことができる。法律でそれが禁止されていない」
=殺人が禁止されていないが、許されていない国
Q8.この話を見てあなたが感じたことは?話の中で直接言われてはいないが、推測できることはあるか?
【記事作成者の考察】
男を殺したのが、テロリストで殺人者というところに注目したい。もしかしたら、彼は社会の闇に飲み込まれてしまい、それを脱出するにはテロという犯罪を起こすしかなかったのではないだろうか?それでもなお変わらない社会に対して見切りをつけ、脱獄をして、新しい平和な国を作ろうとする。平和な国を作るためには、いざというときに殺人を犯してもよいという法律を作る必要があると。それで、「人を殺すことが禁止されていない国」が建国されたのではないかと推察する。
だから、出国後のシーンで平和を望む男性に対してキノはあの国を奨めたのではないだろうか?警告はしていたが。
法律がどういう意図を持って作られたのかを思考する必要がある。さもなくば、あの男のように、物理的でなくとも、微塵子にされてしまうのでは…?
以上、「『キノの旅』1話から文章読解力を鍛える」でした!
このアニメは、大人が見ても、初見では難しい部分も多く、とても深く考えさられるものだと思うので、個人的にもすごく好きです!キノのキャラ設定も魅力ですし(笑)
このようにして、鑑賞を楽しみながら、文章の読解力もつけていけたらいいのではないかと妄想しています(笑)
少しでも役に立てていれば幸いです。